外に出てみたら、昨夜の嵐で、毎年遅咲きの近所の桜が散っていた。
一面に散った桜はまるで雪景色。
舞台上の紙吹雪が、まったくリアルでないことを観客はわかっている。
しかし、イメージとして雪が降るのを表現するのに、こんなに常套的かつ効果的な方法もない。
紙吹雪そのものは、むしろ散る桜の花びらに近いと思う。
舞台上の紙吹雪には、桜が散るイメージも込められているのではないか?
少なくとも日本人には。
そうして、雪でも桜でもリアルでもない、しかし舞台にしかない何かが生まれる。
「演劇的な仕掛けと構造──これがなければ、いかにその台詞が優れていても、どれほどその物語がおもしろくとも、それは演劇ではな(い)」という、岸田戯曲賞選評の井上ひさしさんの言葉は明解で力強い。
紙吹雪が積もった舞台で。
たとえば深津(篤史)さんの「うちやまつり」など、どうだろう?と想像してみる。