舞台美術プランとか劇場スタッフとか、

かつては写真とかもしてきた、松本謙一郎のサイト。


今(2010年〜)はもっぱらツイッター( @thinkhand / ログ )で、ブログとしては更新してませんが。
最近は主にもろもろの告知とアーカイブ、ポータル的編集記事など。

2008年あたりは、割と色々書いてます。






























劇場は生き物

これまでは、あった出来事に投稿の日付を合わせていたが、あんまり日記にもなってないので、これからは書いた日付のままにしよう。

11月23日、すでにしばらくたつが、年明けのパセリスに向けてOFFOFFシアターの下見採寸。
以前、ちゃんと美術プラン(作品記録)として入ったのは、猫☆魂「アンラッキー・デイズ」初演のときだから、2004年。約6年ぶり。
そのとき、割と詳細に採寸してつくった図面(CAD)データはあるのだが、その後一部の壁面を防音強化したという噂を聞いていたのでその確認のため。
あと空間の感覚を再確認する意味も大きい。
実際の空間に身を置き、動いたりしながらの美術打ち合わせは、やはり発想が広がって効果的だ。

その2004年バージョンの図面(CAD)データが、その後数人身近な人の手に渡っていることは知っていたが、意外とさらに流通したよう。
今回の舞台監督が事前に用意していた図面も、よく見ると、そのデータがベースになっていた。
細かい数値がmm単位で同じなので、間違いない。
こういうことが、もっとオープンソースのように展開出来るとよいのだが、舞台スタッフの世界が2.0化していくのには、まだ時間がかかりそう。

バラし(撤収作業)後の下見で、あまり時間もなかったし、作・演出家と色々相談しつつだったので、だいたいのところは以前からの図面を信じることにして、厚くなった壁の寸法のみ要所要所採寸する。
あと、図面に入ってないかもしれないところ、後で気になりそうなところはデジカメで記録。

実測の数字を図面に反映させてみると、奥の壁面が73mmほど厚くなっているようだった。
画像ではないファイルをこのブログにアップするために、Googleグループのファイル機能を使ってみたら可能だったのでアップしてみる。
OFFOFFシアター平面図データ(ベクターv.8)(PDF)(梁図面PDF

こういう個人作成の図面データをオープンソース的に共有していくのには、作図の信頼性、責任という問題が出てくる。
自分が採寸・作図したのではない図面を信じて舞台装置をプランし、建て込んだ結果寸法が合わない、それによってトラブルが発生した場合、だれに責任を求められるのか?

それは、最終的にプランし建て込む者(舞台美術家、舞台監督、大道具チーフ、など状況と現場の性質によると思うが) にあると思う。
自分が採寸・作図していない図面、たとえば劇場側が用意している図面をもとに、寸法ギリギリの装置をプランして、そのようなことになった場合、劇場にその責任を追求出来るだろうか?

そのようなギリギリのプランの場合、作図段階での精度やミスの問題も考えられるし、装置の精度やミス、施工段階での、墨出しや施工方法による誤差やミスまで考えられる。
劇場図面の不備に原因を絞り込むには、相当の検証が必要だ。

工業製品でない舞台装置の場合、(自分の場合は)1mm2mmの精度は目指しても、影響ないと判断したらある程度でよしとするし、3mm4mmでも許す人や状況はあるだろう。
劇場備品(その多くは木製)も経年劣化するもので、多少の狂いは目くじら立てないのが現場の共通認識だろう。平台の框の厚みなど、杉材なら5mm6mmも経年劣化で縮むことがある。
装置も備品も木でつくられることが多いので、反りやゆがみが数mmの誤差になることもある。

そんな装置や備品を構成してつくられる舞台は、1mm2mm〜5mm6mmまで誤差の積み重ねが発生する。部分的に許していた1mm2mmも積み重なれば、10mmにも20mmにもなる。
そうすると、さすがに1mm2mmでは怖いから10mm20mm余裕を見ていたものも入らなくなったりする。ギリギリなら、なおさら。納まらないときは1mm違っても納まるものではない。

そんな、おそろしく可能性が追求できることをいちいち検証していられるほど日本の劇場の現場には時間の余裕はない。追求したところで、大事なのは時間なので、何の保障が期待出来るものではない。
問題が発生しないように、どの程度余裕をみたプランにするのかも、ちょっとくらいの問題は現場で解決できると、解決法も想定してギリギリまで攻めるかも、自分の責任だし自由だ。

だから、劇場公式の図面に精度や信頼性など、求めなくなっているのが、少なくとも自分の身の回りのスタッフのスタンダードだと思う。
自分の場合、ほぼ必ず下見採寸し、自分で作図する。他の図面データをベースに修正をかけたりもする。
それ以前に、ここまで論証してきたレベルよりも圧倒的に精度の低い図面を公式図面にしている劇場が意外と多いのが、日本の、、100を越えて存在する東京の小劇場の現実だ。

その上、ただでさえ劇場はケーブルコンセントや配管など微妙な突起が多くなりがちな上に、小劇場空間には転用施設や自力改装などが多く、むき出しの梁や構造・配管・ダクトなど不規則な箇所が非常に増える。
このOFFOFFシアターも雑居ビルのワンフロアーで、舞台奥の不定形な斜めの壁面と癖のある梁が特徴的だし、同じフロアーの駅前劇場、上手舞台奥のダクトには悩まされたスタッフは数多く、有名だ。
そして、こういった設備は、日々痛むこともあれば、メンテナンスもされ、微妙に形を変えることがある。

管理が杜撰な劇場だとなすがままに老朽化して状態が変化するだろうし、営業努力を惜しまない劇場であれば、改善により状態が更新されていく可能性がある。どちらにせよ、小劇場施設は変化していく性質がある。

舞台スタッフの常識として、劇場公式図面(は、さすがにある程度の信頼性がなければ、劇場としての信頼に関わるが、それをどの程度と考えるかという議論は、別として。別途、共通認識がつくれるといいとは思う。大きなホールのバトン図などが100mm〜500mmもずれてることにはよく遭遇するが、100平米以下の小劇場でそこまで違っているのは、同じに出来ない。)にしろ、だれかが作図した図面にしろ、どう信用してどうプランし仕込む(施工する)のは、実際プランし仕込む者の責任であるというリテラシーが業界で共有出来れば、オープンソース的な図面情報の共有化がもっと進んでよいのだが、と思う。
完全に信用して使うことはないにせよ、より信頼できるベースから修正かけるだけでも楽だし、それほどの精度が必要ないときや、下見採寸出来ないときにはかなり役に立つはずだ。


同じ本多劇場グループの劇場、ザ・スズナリの公式図面には

劇場は生き物です 厳密な数字が必要なところは実際に劇場に来て採寸ください。」

(後半うろ覚え)という名文句が書き込まれている。
腹を立てる人もいるとは思うが、自分は素敵だなあ、と思う。

知り合いの音響さんに聞いた話では、音響ブース内(何度も入ったことがあるのだが、気がつかなかった。)には

「機材が不調なときは劇場スタッフに声をかけてください。 なんとかします

という張り紙があるらしい。
なんとかします」これも格好いい言葉だ。
ちまちまと責任問題とか、条件づけとか説明しない。
相談に乗るのか、いっしょに問題解決するのか、修理するのか、他の機材を用立てるのか、金銭的保障をするのか、わからないが。そんなことは状況による。それがライブの現場だ。
とにかく、なんとかするのだ。なんとかするしかないのだ。
とにかく対応するのが劇場の仕事。
このことに関しては、また何かの機会に書きたい。

連戦明け

9月から、正確には8月末の稽古見・打合せから始まり、11月まで続いた連戦が一昨日エレクトリック・モンキー・パレード「シガラミズム」の千秋楽、そして昨日の荷下し・廃棄作業まで終わった。
まだ色々残務はあるけど。

舞台美術を装置製作まで請けもつと、細々とした領収書も山ほど貯まるし、人を雇ったり、廃棄処理を共同で行ったりもするので、計算や請求や精算や支払という煩雑な作業がつきものになる。
個人だから、自分でやるしかない。
しかも、終わってみないと、いくらになるのかわからないものが多い。
工房(六尺堂)を使用するのも共同運営なので自分で行う事務処理がある。
舞台美術家・装置製作者はナグリ(舞台用金槌)や刷毛を振り回しているイメージの割に、舞台スタッフの中でも意外と煩雑なデスクワークが多いポジションだと思う。

9月〜11月まで、三ヶ月で6公演、一ヶ月2公演ペースだと思って腹をくくっていたのだが、最初の初日から最後の楽日が、実は二ヶ月のうちに納まっているのを、途中で照明家の永さん
「あなたみたいな(時間かけてプランする)人にしたら無茶苦茶なペースだ」
と指摘されて、始めて気がついた。
一ヶ月3公演ペースだった。
忙しいのも無理はない。
それぞれの公演の打合せや稽古見の予定を入れているうちにどんどん予定がうまっていった。


月3公演ということは、月のうち仕込み(施工)1日〜3日、バラし(撤去)1日、で9日〜12日間は消化される。それぞれ、本番の芝居も観るし、初日には飲むし楽日には打ち上げで朝まで飲みもする。
翌日には片づけ作業もあるし、廃棄処理などもしていたら丸一日近くつぶれる。

装置製作にもそれぞれ4日かけたとして、やはり12日間は消化される。

残った6日のうちで、稽古を何回見ることが出来て、打合せを何回出来るだろうか。
もちろん、一日のうちに稽古場を二カ所回ったり、製作作業してから打ち合わせることもあるが、それ以外にも買い物をしたり、資料をあたったり、図面を引いたりという時間が圧倒的に必要だ。
こんなペースではやってられない。
もうやらない、と思う。

それに今回の連戦では、自分としては初めてのことなのだが、楽日(千秋楽 / 公演最終日)の翌日が次の公演の仕込み日という連投さえあった。
バラしには、代打をたてて、積み込んで、仕込み準備の打合せやデスクワークを片づけて、打ち上げに向かい、朝まで飲んで、仕込みに入る。
こんなことは、もうやるまいと思う。


しかし

ロロ「LOVE」2010/1/1〜1/4@王子小劇場

のあと、1/5劇場入りの

パセリス「届かないことだってある」2010/1/7〜11@OFF OFFシアター

をやることにした。

西原理恵子著書にあったと思うのだが「人間というのは、反省はするけど、繰り返す」

後半戦

気がつけば、2009年も上半期が終わり、後半戦に入った。
厳密には、6月末で折り返しになるが、7月にあったマグネシウムリボン「ジャック」は上半期に打合せとかコアな時間が多かったので、感覚としては前半戦のシメといった感じだった。
前半戦は

2月 五反田団「俺の、宇宙船」@三鷹市芸術文化センター星のホール(舞台監督)
3月 フナレ「モンスター」@ウエストエンドスタジオ
5月 ロロ「家族のこと、その他のたくさんのこと」@王子小劇場
7月 マグネシウムリボン「ジャック」@ザムザ阿佐ヶ谷

1月は五反田団の準備に明け暮れたが、舞台監督というクレジットではあったものの本番付き(ほとんどやることもないし)は途中までだったので、2月なかばからはフナレに全力投球できた。
3月末のフナレから5月頭のロロまでは一ヶ月あったし、台本は去年から読んでいた。
7月のマグネシウリボンは2月ごろ劇場を予約する段階からじわじわ打合せを進めることが出来た。
ここまで割と無理のないペースだったと思う。

しかし、後半戦のこのたてこみようはどうか。

9/19〜23   554「怪説・三億円事件」@d-倉庫
10/1〜5   連続模型「ゴシック&ハピネス・ベル」@王子小劇場
10/17〜11/1 五反田団「生きてるものはいないのか/生きてるものか」@東京芸術劇場小ホール1(技術監督)
10/21〜25  Trigger Line「938」@劇場MOMO
11/5〜8   プリタク「パズル」@シアターシャイン
11/11〜15  エレクトリック・モンキー・パレード「シガラミズム」@王子小劇場

連続模型やTrigger Lineは時間をかけて打合せを進めているし、五反田団の話もだいぶ前から身構えていたが、マグネシウムリボンの初日にプリタクの顔合わせをして、今度554の初打合せをして台本をもらったところで、一気に6公演が準備体勢になった感覚でいる。

まだ先の11月ではあるが、プリタクも台本はあってすでに空間や演出のイメージの話が進んでいる。
Trigger Lineは、目下チラシデザインが佳境。そして、台本の一字もない4月からすでに台割図面があるほど空間や演出イメージの話が出ている。
また、時間をかけてきた連続模型やTrigger Lineは、ここにきて台本が固まりはじめた。
いい意味でも、悪い意味でも、すべての作品について考える材料が出ている。
同時に考えることができるし、同時に考えていかなくてはいけない。

作品の製作段階が終盤まで進むと、打合せで一つ一つ問題や課題が解決されて、やるべきこと出来ることが減っていくが、そろって序盤なので、打合せをするたびにやるべきこと出来ることが増えていく。
それぞれに、連絡や打合せ、下見や図面作図、調べること、クリアすべき問題、観るべき映画や読むべき本、などが増えた。

いっせいにスタートラインに揃った感覚だ。

拡声器

マグネシウムリボン「ジャック」楽日(最終日)バラし(撤去作業)。

以前、ある舞台監督さんが、小劇場にめずらしく現場で拡声器(ハンドマイク)を使っていたのを見て、便利かもしれないと思い、去年五反田団の大きなホールでの公演の際に買ってみた。
しかし、現場だと普段から大きなホールでも通るくらいの声を出しているので、わざわざ使うのもわずらわしく、思うほど活用できず。
そうかと思えば、ホールの構造上かなり音を吸われ声が通らない、シアターグリーンBoxinBoxに入ったときには、持って来なかったのを悔やんだ。

今回、バックステージツアーで使うだろうか、とか思いつつも、あまり深く考えず持って来てみたのだが。


これが、意外にもバラし中おおいに活用できた。
マチネ(昼公演)終わりのバラし作業で退館までは時間がある。
単に装置の撤去搬出というだけでなく、今回は劇場内で、解体処理・整理をして、後日すぐに廃棄出来るように、後日作業がないようにする作戦。

普段のバラしより時間も長く、勢いで撤去するだけではない。
また、今回の座組みは出演者、とくに男手が多い。バラしに人が多くワサワサしている。
おまけにみんなでたかって釘やビスを抜いているので、普通に撤去するより作業音・現場の環境音も大きい。

こんなとき、肉声で大きい声を出して怒鳴るようになるより、拡声器で落ち着いて冷静に指示したほうが、非常に現場の統制がとれる。
怒鳴ると、体に対する条件反射で、頭に血がのぼり、感情とか判断とかが左右されるということがあるように思う。
どちらかというと、普段のバラしなどは、そういう勢いを借りることで短時間でやれている気もする。

演説とかデモだとかだと、拡声器でアジるというのは、気持ちを高揚させるもので、今回とはちょっと逆。
今回だと、声を大きくするという以上に、冷静に話すことが出来るツールとして拡声器は有効だった。

今回は時間もあって、頼れる男手も多く、自分がちょっと引いたポジションにいることも出来るから、拡声器も活用出来た。
多分いい意味で、楽するように、自分で動かないで済むようにした。
この、ちょっと引いたポジションにいることも、まあ大事。

と、記事を書こうとして、拡声器と書いたものかメガホンと書いたものか、ググってみて意外。
実は「拡声器 (メガホン wiki)」(電気メガホン)を世界で初めて開発した企業が、王子小劇場でも機材を入れていてよく知っているTOAで、その本社は自分の出身である神戸だった。

一人ジェンガの街

今回舞台美術プランをした マグネシウムリボン「ジャック」の公演会場である ザムザ阿佐ヶ谷 がある阿佐ヶ谷駅北口スターロード界隈の路地は、心地よく昭和のにおいがする。70年代的な、フォークや漫画誌ガロの雰囲気があって、いい感じにくたびれている。
矢井田瞳「一人ジェンガ」のPVを思いおこす。
あれは、たしか新横浜ラーメン博物館がロケ地だったかと思うが、そんなテーマパークのような、映画セットのような、猥雑な「つくりもの」感が楽しい。
ザ・マジックアワー」の街もそうだったが、まさに夜の開演前、マジックアワー時分がよい感じだ。




あきらかに、昭和ノスタルジックに「つくられた」意匠の店もあれば、リアルに古びて味がある店も混在している。そこに、どこまでつくられたかという区別はあまりなくて、共通した空気だけがある。
行き交う人をどう迎え入れるか、空間をつくる意思みたいなものが共有されているのを感じる。



仕込み初日に飲みに行った「かぶら屋」は、都内に増えているチェーンだが、単管(鉄パイプ)や足場板・ドラム缶を店舗デザインに上手く使っていると感心する。そして、飲んでも安い。

リアルにレトロで、昭和30年代のまま時間が止まっているような「富士ランチ」も気になって本番初日開演前に入ってみた。絵に描いたような古い洋食屋イメージで、精巧な舞台装置か映画セットの中にいるような気分になるのが楽しい。レバーステーキとかしぶくてよい。
ロケハンのような、美術プラン取材のような気分。

富士ランチのとなり、インド料理の「バンダリ」も気になるので、バックステージツアーの前に入ってみた。ここ数年で都内には増えた気がするが、ほんまもんのインド人店員による本格インド料理で、店内は現地感満載。ナンがおいしく、ランチメニューでおかわりするのがボリュームもあって得な気分。

本番をともにしない舞台美術家としては、やることがなくなった時間、こうやって劇場近くをぶらぶらして、飲み食べ歩くのはなかなかの楽しみ。
そういえば、阿佐ヶ谷では去年ちょうど同じころ、連続模型「モテイトウ」のときも、そんな感じでぶらぶらしていた。

街の空気感は、観客が劇場に向かうのにも、そこから帰るのにも、その体験につながる大事なアプローチだ。以前、指輪ホテルの観劇アンケートに、「だれと、どこから来て、この後どこに行くのか」を質問する項目があったのを思い出す。有用で鋭く、楽しい質問だと思う。

劇場までのアプローチをゼロからつくることは出来ないが、選ぶことは出来る。
公演は場所選び・劇場選びから始まる。
舞台美術家の仕事もそうありたい。
現実には、なかなか劇場選びから相談してもらえることは少ないのだが。

今回は、劇場予約前に一報相談をしてもらうことが出来た。最終的には、その時点から若干物語のディテールが変わってしまったが、作品イメージとして挙げてもらっていた、高田渡などのフォークの雰囲気は、阿佐ヶ谷の街に非常によく合っていてよかった。
そんな阿佐ヶ谷駅北口スターロード界隈から、ザムザ阿佐ヶ谷へのアプローチは、こんな感じに劇場ホールへとつながる。




日本語は難しい

マグネシウムリボン「ジャック」@ザムザ阿佐ヶ谷でのバックステージツアーの後、工房へ。
六尺堂二階事務所「空庵」にて、NPO化に向けてのリーフレット作成のミーティング。

六尺堂の活動や目的を広く伝えるリーフレットをつくり、NPO化に向けてやサイトのリデザインのたたき台にすべく、内容も正しく、平易で、シンプルな文章を何人もで推敲する。
おおむねうまく整ったと思われても、「てにをは」が間違ってたり、間違っていなくても気持ち悪かったり、間違っていないかわりに意図とは違う意味になってしまったり。

日本語は難しい。

ミーティング中、参考として「建築集団 海賊」のサイトが話題に出て、席上おおいにウケる。感心する。
特に、トップページをリロードするたびに変化する数々の言葉が、うなずけたり、おもしろかったり、格好よかったり、含蓄があったり、とにかくイイ。

「賭け事はやりません。人生がギャンブルなので。」

など、自分も言ったことがある記憶がある。そう思ってもいる。

「踏襲してるけど、一番新しいよ俺たち」

には、ここしばらくで一番笑った。
とくにかく珠玉の語録である。
ランダムなので何回もリロードしないとめぐり会わない言葉もあるが、ぜひ読みつくしたい。
六尺堂を紹介するテキストやサイトも、せひこうありたい。この感覚とかやわらかさが欲しい。

ミーティングは終電間際まで続き、煮詰まったので五反田駅前の居酒屋に場所を移し、アルコールの入ったくだけた頭と環境で、キャッチコピーなどをひねる。
なかなかよいものも出たし、あともう少しほしいところで宿題となる。
公式のリーフレットに載せられない冗談として、「建築集団 海賊」の語録に近いものでは、

「絶対現場主義」

が、なかなかにウケて盛り上がる。
「そうならないようにしましょーよ」という舞台監督たちの声もあったが。

われながら

「船頭がいっぱい」

もなかなか六尺堂の現実らしく、ウケた。
後で思いついたのだが、

「一匹狼の群れ」

なんてのは、どうだろうか?
これもなかなか六尺堂らしいと思うが、残念ながら真面目なテキストには不採用だろう。

日本語は難しいが、コピーも難しい。
それがわかると、コピーライターがすごいということがわかる。
かつて、中島らもさんが大阪の広告代理店でコピーライターをしていたとき、顧客である中小企業の社長に
「これ、5文字へらしたらいくら安なる?」
と言われたという話(ディテールはうろ覚えだが)を思いだし、帰り途話のネタにして笑う。

アールパネル / 色に悩む

工房にてマグネシウムリボン「ジャック」装置製作作業初日。

細部のディテールには、まだ詰める余地があるが、平面のほうは固まっているので、まずはダメ台(割台)の天板やパネル系のものなど、板材(面材・合板)の切り出しから始める。

パネルソーでは切れない角度が多く、丸鋸で切ることにするが、新規に定規をつくるところから始めないといけなかったので、やや手間取る。
丸鋸定規は簡単に自作出来るものだが、ちゃんと作らないと作業精度が出ず、たまに作り直してやらないと狂いが発生するので、これは必要な手間。

後半にかけて出演者の手伝いなどが入るので、まずはあんまり人数でかかれなくて、仕上げ〜塗りなど手伝いに降りやすい工程にまわせるアール(曲面)パネルの製作を片づける。
今回は、自分でもやってみていない方法。ちょっとした工夫を試してみる。


大道具製作ではおなじみの、ベニヤと釘で作れるいい加減なコンパスで曲線を描く。
半径1200mm。
このくらいならいいが、このくらい(舞台前面)大きくてゆるやかだと場所をとるので大変。
ジグソーでカットしている画もおなじみなので省略。









曲面パネルの面材としては、このくらいゆるやかだと普通の並(2.5mm)ベニヤが使われることも多いし、曲がりベニヤ(曲がりやすいように繊維方向をクロスにしないようにつくられた合板。過去、航空機の翼などに使われていたので航空ベニヤと呼ぶとも聞いたことがある)を使う場合もある。
今回は、ベニヤではなく、曲がりやすい性質の2.5mmMDFを試してみた。

MDFは、木質繊維を粉末にして固めたもので、見た目や性質はボール紙に似ている。
塗装せず生成りで仕上げても、質感が滑らかでクリーンなイメージ。
クラフト感ある仕上がりになる素材でもある。
今回は塗装するが、木の目が出ない(下地塗りや、紙張りしないで済む)メリットがある。

並ベニヤより曲がりやすく、竜骨(写真両端の、アールにカットした部材)を両端に入れて、縦の骨材を入れるだけで形に出来るものになった。
並ベニヤによる製法だと、もっと竜骨を間に入れて、縦の骨を通すのにも手間をかけることが多いように思う。組上げも、3×6(尺 / 909mm×1818mm)程度で、20〜30分弱。

MDFが柔らかくて、タッカーが抜けやすいのと、よく曲がりすぎて竜骨の曲線の些細な誤差にも従ってしまうのはデメリット。注意が必要だった。
並ベニヤ程度、強度があるとテンションだけできれいな曲線を描いてくれたりするのだが。
まあ、とりあえず実験。

夜には、杉の幅広板の塗装をテスト。


なんか、こうではないのではないか、悩む。
こういう古民具調にいい感じ、とかいうのだと、やり方もなれているから楽に条件反射で出来るのだが。
今回の狙いは、もっと微妙なコース。いい感じに手入れの入った質感ではなく、いい感じに手入れされていない野ざらしの質感。
自分でも試してみないと、イメージはあるのだが確たる絵としてつかめていない感もあるから、より迷う。

装置の仕上げを「絵で仕上げる(ディテールを、平面的な絵画的手法で描いて表現する)」タイプの美術家、美術プランなら、迷わず描くのだと思うが、それはやりたくないし得意でもない。
そういう舞台装置があまりに多いのだが、もっとリアルな質感や素材感にこだわっていいと思うのだ。

素材感を生かすため、木の目を殺さないように、塗ってつぶさないように、うすくした水性ステイン系の塗料と、かなりうすくといたペンキを何度もかけてみる。
結果、乾いてみないと仕上がりがわからず、板一枚一枚の個体差に仕上がりが左右され、翌日から来る出演者の手伝いにお願い出来ないくらい塩梅を必要とすることがわかり、悩む。

同時進行で、アトリエヘリコプターの壁に塗る色をつくるが、オーダーである既存壁面に合わせるのが、これまたなかなか合わず、苦戦する。

カブトムシ

マグネシウムリボン「ジャック」の劇場入り日が一週間後に迫るが、作業予定を返上して、図面作業・見積検討・材料の発注・買い出し。

当初は余裕を持って、出演者にも手伝いに来てもらいやすいように、劇場入り三週間前くらいを目標にしていたが、全体の進行の遅れで、二週間前に。
そして、ここは焦らずギリギリまでプランの検討を粘って作業に入ることにして、直前の今週中4日間を装置製作作業の日程にした。
予算的にも、規模的にも4日間作業くらい。保険は積込み日に半日ある程度で、本当はもっと余裕があると気持ちは楽ではる。
かわりにアトリエヘリコプターの改装作業を入れ替えで進行して、昨日のうちにめどをつけたのは安心。
今週は、マグネシウムリボンに集中する。

色々迷いのある状態で製作するより、決定した状態で作業するほうが効率もよかったりする。


主婦の買い物のように、購入先による資材の値段を比べ、作業手順上の配達の都合なども考えて、一部の部材をビバホームで購入。
150mm巾×13mm厚×1820mmの杉板を10束、120本ばかりの大人買い。

担ぎ上げると、カブトムシのような。正確にはカブトムシを飼う土のような、濃厚な木のにおいが強くする。木のにおいというのも実は色々あるのだが。
カブトムシというのも、夏らしいというのも、今回の作品には関係のあるところ。
夏の空気感とか。

カブトムシ」といえば、aikoの曲だが、これは実は冬の曲でまったく夏っぽくない。
しかし、この曲が10年前発表だという事実に気がついて少し驚いた。
初めて深夜ラジオのaikoのトークを聞いた時、曲のイメージと一致しなくて驚いたのも懐かしい。

全貌としがらみが見える

マグネシウムリボン「ジャック」、初通し。 通し稽古を見ながら、図面を引く。検討する。 衣装もそろい始め、音響も入って、作品の輪郭がはっきり見えてきた。
画面上にたくさんの線が引かれているのは、色々な客席からの見切れ線だったり、役者の導線の確保・ホールの壁面の形から導き出した線。 こういう感じに線を引いて美術プランを練っていく、作図していくというやり方はあんまり他にやっている人がいるのかどうか知らないが、自分の場合はプラン中のある段階で、「いろいろな事情」の線だらけになることがある。 いろいろな制限や、守るべきもの(作品イメージ、設定のつじつま、役者の動き、見えなければならない、見えてはならない、など)の関係で、ものの位置が決まってくる。 あと、予算や時間。 経済寸法や、流用出来る部材とか、色々なことを同時に考える。 こういったものの「しがらみ」で美術プランは出来ていると言っても過言ではないと思う。 「しがらみ」の末、図面上にここでなくてはならないというポイントが見えてくる。 台本があがったり、通し稽古の段階になって作品の全貌が見えると、やるべきことを拾える、というよりもやらなくていいことが明確にカット出来るような感覚がある。 見えないうちは、可能性が広くてつかみどころがない。 何もない状態で、何か思いつくことは、きっといくらでもできる。 ただ、決めることが出来ない。 制限や条件と、目的に対して必要最小限に削り込むことで、プランが進む。 台本や演技も、通してみた結果、目標の時間に削り込むのがここからの課題。 「余分な間は詰めて、とるべき間はしっかりとる」 というのは、どこの稽古場に行ってもよく聞く言葉だ。 どこが余分な間で、どこがとるべき間かは、作品の全体像とのバランスで測るものだと思う。 そのためには全貌の把握は重要。 稽古後、作演出の塚本さん、舞台監督の田中さんと打ち合わせ。 おそらく、自分が稽古場に来ることが出来るは最後なので、クリアでない部分も残しつつ、出来るだけのことを直接話す。 直接話しておけることの情報量や安心感は大きい。 美術プラン的には、装置の実製作や現場での施工に向けての細かい調整段階。 一点、決めきれていないポイントを残したが、これは他の箇所の作業で素材と向き合いつつ決める感じの宿題となった。

カッターナイフに注意

しばらく更新出来ずにいたが、目下プラン中であるマグネシウムリボンの公演で、バックステージツアーをすることにしたので、工房・六尺堂BLOGでの告知情報更新に合わせて自分のほうもなんか更新しとかないといかんだろうということで。

バックステージツアーに向けて、装置の製作状況なんかもアップしていけたらと思う。
今はまだ、図面上のプラン作業中。
あと数日で、実製作作業に入りたいのだが、、、という状況。
なので、まずは先日の打ち合わせのことから。
実際には今日は7/2なのだが、これは投稿の日付の日のこと。
今もっとプラン進んで図面の詰め段階。
装置の実製作直前だが。

ざっくりとしたプランの方向性と、ざっくりとした平面図上実寸での検討に入った段階での、稽古見、舞台監督さん照明さん入っての打ち合わせ。

今後、プランの試行錯誤から決定段階で、三者がそろう打ち合わせが入れられるかどうかわからないので、打ち合わせられる内容の多少に関わらず、重要な打ち合わせだ。
初期段階で、やりたいことの方向性をすり合わせておくのは大事。

稽古を見ながら、まだ方向性が見えてなかった箇所の方針がなんとなく浮かんだので、説明する。
すでにラフスケッチは数描いているし、ざっくりとした平面図もあるが、それだけではなかなかイメージをわかりやすく説明できない感じの空間構成になってきたので、ものすごい簡単な模型?をその場でつくる。
スケッチの平面上は、すごくラフな平面図と、役者導線をドローングしたり、指示説明するために描いた円や線で前衛絵画の様相だが。


こういう時に、筆記用具とともにカッターナイフを備えているのは便利。

しかし最近、職質をうけた時にカッターナイフを持っていたので、事情聴取に連行された舞台監督さんが知り合いにいた。カッターくらいで連行されたのではかなわないなあ、、、
と、いう話をしたら、他からも同様な話を聞いたという声が、次々。

美術家でも、舞台監督でも、照明さんでも、舞台スタッフはカッターナイフとか所持していることが多いと思うので、けっこう職質に引っかかっているのではないだろうか。
とにかく、そのままでカバンとかに入っているのはよくないらしいから、何かケースに入れるとか注意が必要だ。

打ち合わせは、宿題を残しつつも、一番照明に影響が出る部分に関しての、照明サイドからの希望や都合など聞けたので安心して前進。
演出との間で先行して話していた、われわれの中で了解事項になってしまっている作品イメージに関わることもリプレイするように話題に出して共有する。

経験値をかせぐ

うかうかしていたら二ヶ月も更新出来ずに過ぎてしまった。
正確には10月の記事も11月に書いていたのだが。
振り返りつつ、書くべきこと書こうと思うことは書いていきたい。
都合、多分2008年9月〜12月あたり日付の記事に関しては、かなり後から書いたことになる。
もしかしたら8月あたりの記事も書くかもしれない。

それはそれとして。
ナカゴー仕込み日、王子小劇場へ出勤。
新規入れ替え機材の使い方を習得したり、機材トラブルの解決をしたりで、経験値をかせいだ一日。
朝、搬入口(通用口)に行くと、今日から今年からピンポイントで劇場スタッフに加わるヨシムラアイコ嬢がすでに。
ヨシムラ嬢へ劇場業務のガイダンスは他のスタッフに任せて、団体の仕込み対応をする。
ワンボックスカーに余裕のある量の搬入はすぐに終了。
照明の仕込み(機材セッティング)は昼からの予定であるうちに、午前中配達指定した入れ替え機材が届く。
故障した照明(操作)卓に替わるもの。

これまでの照明卓は、「マニュアル操作卓」である丸茂の「Lighting boad」だったが。
入れ替えで入るのは「記憶卓」であるETCの「Smart Fade 2496
記憶卓というのは、マニュアル卓だと手動で行っているフェーダー操作、言いかえるとシーンごとの照明のバランスや変化のスピードなどを機械に記憶させて、簡単に狂いなく操作出来るシロモノ。
自動車のマニュアルミッションとオートマチックの違い、と言えば知らない人にはわかりやすいと思うが、あまり正確な比喩ではないだろう。
あるいは、今まで手作業でやっていたことをパソコンでやる違いに近いか。
圧倒的に便利にはなるが、覚えるべきことが発生する。増える。
それも機械・機種個別の操作方法を覚えることが必要になる。

新入り早々ではあるが、この卓を使ったことがあるヨシムラ嬢に、使い方を聞きつつ、説明書をひもとき、とりあえず今回の団体に使ってもらうのに最低限必要なマニュアルでの操作方法を探る。

この「Smart Fade 2496」は記憶卓ではあるが、マニュアル操作で「24フェーダー・2段」という、これまでに遜色ないスペックでの使用が、容易に可能という話で選んだ。
劇場利用者には、記憶卓に慣れたプロでベテランの照明家もいれば、ごく簡単な照明効果をシロウトの役者さんが操作する場合もあるので、アナログでわかりやすくマニュアル操作出来ることも重要、というのが目下の王子小劇場のスタンスだ。

しかし、容易にマニュアル操作(「Smart Fade 2496」の説明書では「2シーンモード」となっている)出来るはずなのに、ヨシムラ嬢も記憶卓としてしか使ったことがなく、「2シーンモード」への切り替えが、盲点のような方法
(モード切替スイッチが電源スイッチと兼用!)
で、説明書の目立たない箇所に書かれていたため、しばらく試行錯誤する。
そもそも記憶卓を完全マニュアルで使用するということ自体が、プロの照明さんからしたら、やや盲点。

説明書には、電源を入れて何もしなくても「2シーンモード」つまりはマニュアル・2段で使えるかのように書かれていたが、現実には、パッチ(各フェーダーに各DMX信号のchを割り当てる、簡単に言うと各フェーダーが担当する照明機材を決める)をしなくてはならず、そしてパッチをするには「ノーマル・モード」に切替えなくてはいけないという盲点もあった。

ともかく、新しい照明卓のマニュアル操作での使い方を習得。やや経験値が上がった。
記憶卓としての使い方を覚えるのは、またの機会。


照明のミッションをクリアしたところで、今度は音響のトラブルが起こる。
CDデッキのボタン操作をした時に、原因不明のノイズが入る。
各機材、ケーブル、すべてチェックしてみても解明が出来ない。
アンプやスピーカー、電源を変えても同様に発生するので、デッキ自体の問題ではないかと絞り込む。

念のため、知り合いの音響さんに相談してみたところでも、まず考え得るのはデッキではないか、とのこと。
やや故障するには早いが、買って数年するものではあるし、業務用機ではないので、考えられなくはない。
プロの音響さんの感覚だと、デッキ類は消耗品だ。
ヘビーに使う人なら、1年とか1ツアーで買い直すという話も聞く。

ホール内の作業が、音響の時間にならないうちに、他のスタッフに秋葉原まで新しいデッキを買いに走ってもらう。
こういう時、秋葉原が近いのは便利だ。
すでに二世代後の後継機になったCDデッキが購入されてきて、すぐにつなぎ直してみる。

しかし、それでもノイズが消えない。
問題は、デッキではないらしい。
こうなると原因はミキサーしかないと睨んで、すべての思いつく点をチェックする。
まさかそんなはずではない、ファンタム(ファントム)電源(について、くわしいことを書くととても長くなるので、参考サイト
http://homepage1.nifty.com/ENTARO-KOYA/mic.htm
http://www2.famille.ne.jp/~teddy/balanced/bal3.htm
http://blog.zaq.ne.jp/senri/article/60/
など)のスイッチが入っているのを見つける。
原因はここだった。

新しいデッキを買ってしまったのは無駄だった気もするが、原因を迅速に絞り込めただけでも正しい判断だったと思う。
そうでもなければ、ファンタム電源など普段使うことがないので、思いつきもしなかっただろう。
今回のトラブルで、すでに古いデッキが損傷している可能性もあるし、そうでなくてもそのうち入れ替えは必要だったろうから、無駄ではないはず。

とにかく、こういうトラブルを解決する経験が技術になる。
舞台スタッフのスキル、特に本番オペレーションを行う照明さんや音響さんの技術というのは、その操作の技術だと思われることもあるだろうが、本当はこういったトラブル解決技術が大きいのだと思う。
現場は常に思いもよらないトラブルとその解決の連続だ。

劇場スタッフとしては、出来るだけそのトラブル解決に力にならねばならないが、傍観者的に劇場管理をしているだけではなかなか現場的な経験を積むことが出来ないので、こういったトラブル解決をする機会は貴重で重要だと思う。