以前、ある舞台監督さんが、小劇場にめずらしく現場で拡声器(ハンドマイク)を使っていたのを見て、便利かもしれないと思い、去年五反田団の大きなホールでの公演の際に買ってみた。
しかし、現場だと普段から大きなホールでも通るくらいの声を出しているので、わざわざ使うのもわずらわしく、思うほど活用できず。
そうかと思えば、ホールの構造上かなり音を吸われ声が通らない、シアターグリーンのBoxinBoxに入ったときには、持って来なかったのを悔やんだ。
今回、バックステージツアーで使うだろうか、とか思いつつも、あまり深く考えず持って来てみたのだが。
これが、意外にもバラし中おおいに活用できた。
マチネ(昼公演)終わりのバラし作業で退館までは時間がある。
単に装置の撤去搬出というだけでなく、今回は劇場内で、解体処理・整理をして、後日すぐに廃棄出来るように、後日作業がないようにする作戦。
普段のバラしより時間も長く、勢いで撤去するだけではない。
また、今回の座組みは出演者、とくに男手が多い。バラしに人が多くワサワサしている。
おまけにみんなでたかって釘やビスを抜いているので、普通に撤去するより作業音・現場の環境音も大きい。
こんなとき、肉声で大きい声を出して怒鳴るようになるより、拡声器で落ち着いて冷静に指示したほうが、非常に現場の統制がとれる。
怒鳴ると、体に対する条件反射で、頭に血がのぼり、感情とか判断とかが左右されるということがあるように思う。
どちらかというと、普段のバラしなどは、そういう勢いを借りることで短時間でやれている気もする。
演説とかデモだとかだと、拡声器でアジるというのは、気持ちを高揚させるもので、今回とはちょっと逆。
今回だと、声を大きくするという以上に、冷静に話すことが出来るツールとして拡声器は有効だった。
今回は時間もあって、頼れる男手も多く、自分がちょっと引いたポジションにいることも出来るから、拡声器も活用出来た。
多分いい意味で、楽するように、自分で動かないで済むようにした。
この、ちょっと引いたポジションにいることも、まあ大事。
と、記事を書こうとして、拡声器と書いたものかメガホンと書いたものか、ググってみて意外。
実は「拡声器 (メガホン wiki)」(電気メガホン)を世界で初めて開発した企業が、王子小劇場でも機材を入れていてよく知っているTOAで、その本社は自分の出身である神戸だった。