舞台美術プランとか劇場スタッフとか、

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2008年あたりは、割と色々書いてます。






























2008年7月10日

ちくわ木産

連続模型モテイトウ」劇場入り7日前。
ちょっと早いかもしれないが、自分としては劇場入りまでに最後の打ち合わせとなる。
舞台美術家の〆切は、装置製作の作業があるため、他セクションより早くもなる。
打ち合わせも早いうちに進める必要がある。
今日は稽古は見ずに、打ち合わせにのみ吉祥寺まで。
今回はあまり厳密な平面図は作成しない。
だいたいの物は現場で配置してみて、自由に動かしてもらうというアバウトさがコンセプトの舞台美術プラン。
しかし一応、劇場サイトから落とした図面画像をトレスし、ざっくりした劇場のCADデータをつくって打ち合わせに臨む。

ドラマ「下北サンデーズ」には、さくら水産がモデルと思われる、演劇関係者が集まる安い居酒屋「ちくわ木産」というのが登場していた。
この日の吉祥寺・さくら水産は、まさに「ちくわ木産」状態に、客席が見事なばかりに全員演劇関係者だった。

下北沢ならいざ知らず、吉祥寺でこの状況とは。
しかし、吉祥寺には以前から稽古場スペースBeもあるし、連続模型でも、他の団体でも公共施設の稽古場を使ったりしている。
最近では吉祥寺シアターが出来て、質の高いプログラムも多い。
近隣の三鷹芸術文化センターも小劇場演劇に力を入れていることで有名。
吉祥寺の街自体も、様々な店舗があるし、ライブハウスが多く、ミュージシャンが集まったり、文化的土壌があるように思える。
演劇が活況を呈する要件はそれなりにあるのかもしれない。
東京はいくつもの街が文化的なコアとなり、寄り集まって文化圏を築いている。
吉祥寺も間違いなくそのコアのひとつになり得ている。

たとえば、吉祥寺シアタークラスの、いやもう少し小さくてもいいが、地方都市にありそうな中劇場で地元劇団が成長し、演劇がそれなりの頻度で上演されるにはどのくらい演劇人口や施設が必要なのか、思考実験として大雑把に計算して考えてみる。

たとえばキャパ200くらいの中劇場がひとつ。
そこで動員800人くらいの団体の公演が月に二回くらいかかっているとすると、年間で24回。
首都圏でなければ、年二回公演くらいでないと辛いとして、動員500人〜800人くらいの中堅劇団が10団体くらいあるとする。

そのうち半分くらいの団体が新陳代謝するとして、数年おきにこれくらいのクラスの劇団を5団体くらい生む状況を考えると、民営のキャパ50〜100くらいの劇場(を公共がつくることは少ない)が四つくらいは必要ではないか?と感覚的に思う。
新しい劇団が生まれるには、小規模の空間から段階的に劇場が必要になる。
一定の動員力つまりはクオリティーの劇団が成長するには、いくつかの団体が切磋琢磨し、生で上演を観る機会が必要だ。
そうすると、最低四つくらいではないか?と思う。
劇場の稼働率が半分でよいとして、年間25公演×4=100公演。年二回公演したとして50団体はないと、民営の小規模劇場はやっていけないだろう。

その年間100公演が稽古できるだけの稽古場施設が、2つから3つ、中堅劇団を入れると4つから5つは必要か。
これはあくまで稽古場専門とした場合で、他の利用と混在する場合はその分、豊富な公共施設などが必要になる。
一団体10人くらいいたとして500人、中堅劇団を入れると演劇人口600〜700人くらい。

ということは、ひとつの中劇場で演劇公演が活発に行われる水面下には、スタッフや周辺人口まで余裕をみると800人くらいの演劇人口が円滑に演劇活動出来る土壌が必要ということになる。
800人くらいの演劇人口が、一週間に一回飲みに行ったとして、一晩に100人とか?
偶然よく行く店に集まることも想像に難くない。
吉祥寺の場合、その土壌や演劇人口は中央線沿線〜都心部とリンクしているから、そのままの数、吉祥寺の演劇状況とは言えないだろうが、さくら水産がちくわ木産化するのもやや納得できる。

これはかなり大雑把な、あくまで思考実験としての計算だ。
数字の根拠もない。しかし、演劇の現場に関わる者の感覚としてはそれなりの説得力があると思う。

現実の地方都市では、状況はもちろんこんなもんではないだろう。
地域により差はあると思うが、はるかに少ない演劇人口と、施設はじめ厳しい状況で演劇活動をしているだろうと思う。
旗揚げ劇団に適した上演会場も少なく、いきなり中劇場の大ホールで1日公演をする、などという現実があることは知っている限りでも想像できる。

公共ホール・劇場などをつくるといった、文化行政を行う方々にはぜひ認識してほしい。
大きく立派な劇場だけつくっても、文化振興は出来ない。
少なくとも地元の演劇は育たない。
稽古場や小さな劇場、ライブハウスや「ちくわ木産」が文化的土壌としては必要なのだ。

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