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2008年あたりは、割と色々書いてます。






























2008年8月10日

舞台美術家になるには

2008年、夏のワークショップ二日目。

発表終って打ち上げとしての懇親会。
ワークショップ参加者の学生と飲みながら話す。
「舞台美術家になりたいんですが、どうすればいいですか」
よく聞かれる話だ。

写真・映像をやっている学生とも話し、同様なことを聞かれる。
やはり、よく聞かれることだ。
答えられることは同じで、最近思うには、多分一つだと思う。
「とにかく、演劇でもダンスでも、映画でも、写真でも、たくさん観ること」

舞台美術家になりたいのであれば、まずその前に演劇を好きになることだと思う。
そうでないと、子供が漠然とプロスポーツ選手とかパイロットに憧れているのと変わらない。
舞台美術家になるのではなくて、気がついたら舞台美術をつくっていた、というものではないだろうか。
舞台美術家(あるいはその他の何か)になるということが目的になってしまっては多くの場合ダメだと思う。
まずは、そのことを行う基本的な動機を強く持たなくてはいけない。
なることが目的になってしまうと、そこで終ってしまう。
そのことがやりたくて、やり続けることが大事なのだと思う。

すでに、演劇に関わったり、アマチュアや学生でわずかでも舞台美術を創作していて、舞台美術家になりたいと思うなら、やや事情が異なる。
すでに基本的動機が備わって、それを続けたいから、その職業を行おうと思うわけだから。
そういう人にはすでに具体的な状況やイメージがあるだろうから、それに即したアドバイスが個別に出来ると思う。それはホントに個別であって、一般論はない。
そして、そのくらいの状況だとなんらか入口は見えてるもので、相談は漠然としたものにはならない。

だから、漠然と舞台美術家になりたいと思うなら、まずその理由を考えつつ、とにかく演劇を観て、好きになること。好きな演劇を見つけることだと思う。
好きな演劇が出来たら、それを目指す目標としてもいいし、それがとてもハードルの高いところ(劇団、業種、団体、会社)だとしても直接アタックしていいと思う。
いきなり敷居の高い劇団や高名な舞台美術家の門をたたいてもいいわけだ。
あるいは、目標は持ちつつ、自分と同じような段階にいる学生劇団や若い劇団と知り合うチャンスをつくってもいい。知り合うには、まず観に行くことだし、手伝い募集でも打ち上げでも、出会えるチャンスには出て行くことだ。
舞台美術は、まず舞台公演がないとはじまらないので、出会うことは必須で重要。

これが、写真だと一人でも始められる。
カメラさえあれば、今日からでも始められる。
考え方一つで携帯カメラでも始められる。
携帯カメラの画で満足できなくなったら、もっと本格的なカメラを買えばよい。
人間、本気でやりたかったら、本気でやりたいスペックを備えているものを、無理してでも手に入れるので、欲求に素直であれば、基本的動機に従って段階は進むと思う。
そして、何らかカメラを手に入れたら、とにかく撮ること。
そして自分が撮ったものを見る。
憧れる先人や、他の人の作品もたくさん見る。
そして、自分の撮ったものを客観的に見返す。
これを繰り返すだけで、写真は間違いなく上達する。
ある程度続けたら、他人に見せて正直な意見を聞くこともよいし、必要。

自分にとって写真の師匠と呼べる人にはじめて会ったときに言われたことを覚えている。
「カメラマン(職業写真家)としてやっていきたいなら教えられることはあるけど、作家(写真家)になるのはいつでもなれるし、教えられることはない」
そして
「自分が写真家でありたいなら、つねに作品を撮り続けること。作品を撮らなくなったら、いくら仕事として続けていても写真家じゃない」

作家としての写真家にはいつでもなれるし、やめらる。
舞台美術家はなかなかそうはいかない。
基本、舞台公演があってつくることが出来るから。
自分で、自分がやりたい舞台美術をつくるために座組や公演をつくってしまうことも、広義にはあり得る。
しかし、舞台美術をつくることが先になってしまって、その舞台公演がつきあわされるのなら本末転倒になる。
だったら、空間なり立体なりのみで成立する何か美術作品をつくることを志したっていいのだ。
それではやりたいことと違うのなら、何かその理由はあるはずで、それは観ること、関わることの中で発見できるのだと思う。

たくさん見ているうちに知識も身につく。
情報も入ってくる。
しかも、今はウェブ上で情報をとり入れることもどんどん楽になっている。
ウェブ上で情報を探すのに一番大事なスキルは日本語の能力だと思う。
だから、たくさん観ることと同時に、色々なものを読んで日本語の能力を高めることも大事だと思う。
そうして、色々なものを読み、自分で検索する能力を身につけ、また色々なものを観て、動機もはっきりするころには、自力であるいは何らかの偶然で、目的とする世界への入口にはたどり着けているものではないかと思う。

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