舞台美術の参考といっても、読むべき見るべきものは多岐にわたる。
多岐にわたるべきだと思う。
参考にするものが短絡的即物的ではつくる物が薄っぺらくなるし、作品そのものへの深い理解がまず大事だと思う。
そのためには、参考にすべきものは無数にある。
宣伝美術は、もう急がないといけない段階で、そんなことをしている場合でもないのだが、まだ完成台本がない段階では、こういった参考が重要。
今回の作品は、ペルーの日本大使館人質事件がベースになっており、具体的にどこかの国を設定した物語になるのではないけれども、そこが南米である必要が作品の根底にある。その風土歴史・内戦やゲリラの事情を知ることが作品上重要であると、打ち合わせの結果感じたのだ。
読んだ(読みつつある)結果としては、今回の作品のためということにとどまらず収穫が大きい。
チェ・ゲバラのことに関しては、ざっくりと知っていて興味はあっても、詳しい評伝や著作を読む機会をもって来なかった。
こういうのは巡り合わせというか、山ほどある本や映画の中から選んで出会うのには、タイミングとか必然とか運命的なものとかはあるのだろう。
トリガーラインの作中人物に近い感覚から。また、ゲリラそのものよりも南米の状況や歴史から入りたかったので、とはいえ南米の歴史民俗に関する本を一冊一冊攻めていくわけにもなかなかいかないので、本屋で見つけた中から
「モーターサイクルダイアリーズ」
「ゲリラ戦争」
「ゲバラ日記」
と読み進んだ。
「ゲバラ日記」は読み始めたところ。
まだ読んでないが、入門書としては「チェ・ゲバラ伝」の評判もよいよう。
しかし、今回はゲバラ本人の筆によるもので、南米や革命の起こる空気を感じたかったし、いきなり活動家の側面から入ったのでは、実感として入りにくいと思ったので、「モーターサイクルダイアリーズ」から始めた。
小説のように事細かな描写はないので、読むのに想像力を必要とされるが、生の文章と空気感から得られる情報量は多い。
そして、自分の行く先がわからない若いころに、ちょっとした放浪や旅の経験がある人(少なくはないと思う)には、非常に共感しやすいものがある。
「ゲリラ戦争」はいわばゲバラの経験に基づいたゲリラ戦の参考書のようなもので、作品づくりの中でゲリラ活動家のディテールを深めるのに直接的に役に立つ。
「負ける戦いはするな」「まず、靴が大事」というようなあたりは非常に明解。
しかし、いわゆるハウツー的ではなく、極めて理論的にそしてゲバラのメッセージが込められいるのが深い。
まったく他の分野の状況にも比喩的に生かせるような言説も数多くある。
小劇場演劇とか、日本の文化経済の中でゲリラ戦を行っているようなものだとも思う。
この二作を読んだあとで「ゲバラ日記」を読みはじめると、そこで簡潔に描写される出来事が、鮮やかな空気感を持って感じられてよい。
これはよい順番で読み進んだ、と思う。
ゲバラに関する出版物は数多く、もっと知りたい興味にかられる。
しかし、その中でもゲバラ自身による著作・文書が、忙しく生きて志なかばで倒れたのにも関わらず、思いのほか多いことに驚かされる。
ゲリラ活動や政務の忙しい中、これだけの執筆、日記の記述を続けていたということを見習わねば、と、ブログが滞るのを顧みて思う。
世界を変えることを志して、いつか戦場で倒れるかもしれないことも当然覚悟していたであろうゲバラは、多くの著作ではもちろんのこと、私的な文書や日記も自分の死後多くの人に読まれることを想像し意識していたと思う。
自分の肉体が滅んでも、世界を変えることを考えたに違いない。
事実、多くの人に影響を、それは世界を変えることに他ならない、、、を続けていると思う。
「みんな、チェのようになろう」
というのは今でもキューバで掲げられているスローガンだそうだ。
これほど強固な意思と自律を持った人物には、自分など尊敬はしても、まずなれないが。
しかし、ブログの更新ぐらい、なんとか見習いたい。